希望歌

morisakikazuo2006-04-10

1920年朝鮮半島で広く深く愛唱された曲に「希望歌」がある。歌詞の中に「希望」という言葉は出てくるが、内容は虚無的で、一般には「絶望歌」と呼ばれることが多かったようだ。Morris.の持ってる「韓国歌謡」(世光出版社 1975)には「蕩児 自嘆歌」という副題が付けられ、作詞作曲は未詳、歌手はチェギュヨプとなっている。右の顔写真も同書に掲載されていたものである。
「韓国歌謡史の話」(アルム出版社 1994)には「本格的流行歌手チェギュヨプ」と題して5pほどの記事がある。それによると、彼はバリトン声楽家を目指して日本に留学したこともあるらしく、1931年には古賀政男の「酒は涙かため息か」を翻案して韓国語歌詞で発表している。戦争中もかなりの人気歌手として活動を続けたらしい。
この「希望歌」は一度聴いたらすぐわかる曲である。「真白き富士の嶺」の歌詞でおなじみの「七里ガ浜哀歌」のメロディそのままだからだ。もともとこの歌の原曲に関しては色々ややこしいことになっていた。
日本の西洋音楽受容期に大きな影響を与えた、キリスト教の讃美歌集の中にある「When we arrive at home」という曲がそれで、これを大和田建樹が「明治唱歌五」(明治23 1890)に「夢の外」というタイトルで流用した。そしてこのとき作曲家はアメリカのガーデンという人ということにされていた。この曲はかなり親しまれていたらしく、明治43年(1910)の湘南海岸での開成中学の少年たちの遭難事故を祈念する歌を作るときにこのメロディを流用されたのが「七里が浜哀歌」として現在まで広く知られることになった。しかし 実はこの「夢の外」の原曲は、イギリスの舞踏曲のひとつであり、アメリカの作曲家であるジェレミー・インガルスが、1805年に賛美歌集「クリスチャン・ハーモニー」の中に「 Garden 」 の曲名として採集して紹介していたものだったのである。
以上のネタ元は、フナハシ学習塾のサイトにある「童謡の謎」で調べた。もっと詳しいことを知りたい人はこちらを見るように(^^;)
http://homepage3.nifty.com/funahashi/sonota/hoka18.html
回り道をしてしまったが、「希望歌」のメロディも99%の確率で日本の「七里が浜哀歌」の流用だろう。
この曲は最初ラジオで聴いたか、歌謡舞台で見たのかどちらかよく覚えていないが、当然メロディは知ってるし、歌いやすいので、Morris.のノレバンでの十八番とは言わなくとも、ときどき歌うことがあった。在日の年配の方がえらくびっくりしたり、懐かしがったりするのが嬉しかったのだ。
Morris.は長いこと、歌詞の途中「부귀와 영화를 누렸으니」の部分を「ブギや映画に夢中になって」だと、勘違いしていた(^^;)
Morris.が持ってる唯一の音源はキムスヒのアルバム「PATHOS」に収められているものだが、これがまた物凄く良い。途中に男声の台詞が挿入されていて、この台詞はキムスヒが作ったものらしい。また最後の一行が疑問文でなく断定で終わるのも、彼女の創意工夫かもしれない。

[희망가  채규엽
ヒマンガ チェギュヨプ]


이 풍진 세상을 만났으니
イプンジン セサンウル マンナスニ
너의 희망이 무엇이냐
ノエヒマンイ ムオシニャ
부귀와 영화를 누렸으니 희망이 족할까
プギワヨンファルル ヌリョッスニ ヒマンイチョッカルカ

푸른 하늘 밝은 달아래 곰곰히 생각하니
プルンハヌル パルグンタラレ コムゴミセンガッカニ
세상만사가 춘몽중에 또 다시 꿈같다
セサンマンサガ チュンムンチュンエ トダシクムガッタ


이 풍진 세상을 만났으니
イプンジン セサンウル マンナスニ
너의 희망이 무엇이냐
ノエヒマンイ ムオシニャ
부귀와 영화를 누렸으니 희망이 족할까
プギワヨンファルル ヌリョッスニ ヒマンイチョッカルカ

담소화락에 엄벙덤벙 주색잡기에 침몰하랴
タムソファラゲ オムボントムボン チュセクチャプキエ チンムラリャ
세상만사를 잊었으니 희망이 족할까
セサンマンサルル イジョッスニ ヒマンイ チョッカルカ

세상만사를 잊었으니 희망이 족하다
セサンマンサルル イジョッスニ ヒマンイ チョッカダ

「希望歌」

この風塵の世の中に生を受けて
お前の希望は何なのだ?
富貴と栄華をきわめれば希望が充たされるのか?

青い空 明るい月光の下でじっくり考えたら
世の中万事が春の夢のまた夢に過ぎぬ

この風塵の世の中に生を受けて
お前の希望は何なのだ?
富貴と栄華をきわめれば希望が充たされるのか?

心の弱さでうかうかと酒や女色に耽溺しようか
世の中のことすべて忘れたら希望は叶うのか?

世の中のことすべて忘れさえすれば希望は叶うのさ