延辺アガシ

morisakikazuo2006-08-02

10年ほど前、今は清渓川開発で消滅してしまったソウル黄鶴洞の泥棒市の路上屋台で、ポンチャックテープを買いあさってたときに、買ったテープである。「延辺娘-ヨンピョンアガシ」というタイトルとジャケットのキッチュなイラスト(右画像)にちょっと興味を覚えたので買ったのだろう。帰国してから1,2回聴いたかもしれないが、何となく忘れてた。当時はイパクサとキムヘヨンという男女BIGポンチャック歌手に夢中だったし、歌手本人との親交も深まってるときだったから、いたしかたない(^^;)
Morris.のオーディオ環境も、CD、MD、そして今やMP3が中心になってたことから、カセットテープはめったに聴かないメディアに成り果てていた。
5月の新生Morris.亭への引越しの際には、思い切って処分しようかと思った。書籍はほぼ1/3、VHSテープは半分くらい処分したと思う。でもカセットテープはそれほど容積もないことだしジャケット見てるうちについつい捨てるにしのびなくて、プラスチックの衣装ケースに詰め込めるだけ詰め込んで引越ししてしまった。たぶん400本くらいあるだろう。
引越ししてから、やたら仕事がヒマな時期があって、朝からこのテープを片っ端から聴き続けることがあった。そのとき、この「延辺アガシ」を聞いてビビッとくるものがあった。
延辺-ヨンピョンは中国北東部北朝鮮に隣接する朝鮮族の多い地域(吉林省)の都市で、アガシは娘だから、当然、中国朝鮮族の娘が歌ってるナンバーということになりそうだ。歌手名はキムサンハクとあるが、もちろん説明や写真はないし、彼女が本当に中国朝鮮族の歌手なのかどうかもわからない。
歌われているナンバーの大部分は韓国トロット歌謡である。A面B面10曲ずつの計20曲が収められて全体で40分足らず、ということは、1曲平均2分以下ということになる。
ジャケット裏面に「シンナヌン ポルカメドレー」と書いてある。この「ポルカ」を目にしたとき、Morris.ははたと思い当たった。イパクサの兄貴分でもあるキーボード名手のキムスイルさんが、関空から大阪市内に向かうタクシーの中で言った言葉。Morris.の「どんな音楽が一番好きなんですか?」という質問に間髪をいれず「ポルカが好き」という回答。
ポルカと言うのは、ポーランドの軽快な舞曲だが、韓国では一種の音楽ジャンルになってたらしい。韓国でトロットと言えばいわゆる「演歌」だし、「ゴーゴー風」はロック調の曲のことである。ポルカはとにかく軽快で明るいノー天気な歌謡である。日本歌謡でいうと「青い山脈」みたいなタイプといえば、年寄りには(^^;)わかりやすいだろう。
もちろん、どんな曲でもポルカ調に編曲することは可能だが、このテープに収められている20曲の大部分はもともとポルカ調だったのではなかろうか。

A面

  1. チョンチュエンクム(青春の夢)
  2. ヘンボゲイリョイル(幸せな日曜日)ソンミンド
  3. サマゲハン(砂漠の漢(男))コボクス
  4. コンマチャ(花馬車) ジンバンナム
  5. イビョレプサンチョンゴジャン(別れの釜山駅) ナミンス
  6. ムジョンヨルチャ(無情列車) ナミンス
  7. テジエハング(大地の港) ペンニョンソル
  8. ハイキンエノレ(ハイキングの歌)トミ 
  9. カムギョクシデ(感激時代) ナミンス
  10. ウルリヌンキョンブソン(涙の京釜線) 

B面

  1. マルリポサラン(万里浦の愛) パッキョンウォン
  2. クッセオラクムスナ(強くなれクムスナ) ヒョンイン
  3. チャルイッコラハングヤ(元気か港よ) 
  4. チョンサンユス(青山流水) キムヨンマン
  5. ムノジンサランタプ(崩れた愛の塔) ナミンス
  6. キョンサンドアガシ(慶尚道の娘) パクチェホン
  7. ロッキソウル(ラッキーソウル) ヒョンイン
  8. ピッソリヌンネマウムガッチ(雨音は私の心みたい) 
  9. パダエキョヒャンシ(海の交響詩) キムジョング
  10. サランエメアリ(愛のやまびこ)トミ 

20曲中歌手がわからなかったのが4曲、Morris.が歌える曲といえばナミンスの3曲、他はB面7曲目の「ラッキーソウル」くらい、というのがちょっと情ないが、B面2曲目の「クッセオラクムスナ」、9曲目「パダエキョヒャンシ」あたりは、是非レパートリに加えたいと思っている。
このアルバム、全曲テンポはほとんど同一の明るいリズムだし、歌唱もめちゃうまいわけでもないのだが、何か哀愁を含んだ色っぽさがあって、盟友ムックさんもすっかり中毒状態になってしまったようだ。
左右のチャンネルに歌手が斉唱みたいにダブって録音する技法--チェジニのカペノレ、キムヘヨンのエップンカペで確立されたものか?--が、ここでも踏襲されていて、これはヘッドフォンで聴くと、実に無重力状態に置かれたみたいな不思議な気分になってしまう。宇宙酔いポルカというべきか。
このポルカにはアコーディオンが必須のようだ。鍵盤楽器はからきし駄目なMorris.なので、いつかMorgan's Barの井山君あたりをうまくたらしこんで、このての曲のバックをやってもらいたいものである(^^;)