チェジニ

morisakikazuo2004-10-21

チェジニは韓国トロット女性歌手の代表選手といえよう。韓国では演歌のことを一般にトロット(トゥロッツに近い)と呼ぶ。英語のtrotから来たものと思う。
もうちょっと蔑称というか安っぽい呼び方が「ポンチャク/ポンチャック」である。演歌調の伴奏の「ズンチャッチャ、ズンチャッチャ」を韓国人は「ポンチャッ、ポンチャッ」と表現するから、これに由来することは間違いない。日本語の「ド演歌」に近いかもしれない。
チェジニは、ちょっとだけ垢抜けしてるのでポンチャク歌手とはあまり呼ばれない。トロット歌手というのがぴったりである。
一時喫茶店などのBGM用にトロットメドレーのテープを出して、ちょっとした「カペノレ」ブームを作った。「カペ」は「Cafe」、「ノレ」は韓国語で「歌」のこと、ちなみにこの日記のタイトル「ノレ番」は、「歌の番人」という意味でもあるのだが、韓国語で「ノレバン」といえば、「カラオケボックス」のことである。ちょっと高級なカラオケスナックみたいなのは「タルランチュマッ-団欒酒幕」と呼ばれるが、なかなかMorris.は行く機会はない。
閑話休題、チェジニは1961年1月3日生まれ(60年10月3日という説もある)。どちらにしろ現在40代半ばですでに大御所的存在だが、83年に「ハヌルタリ=天の橋(虹のことかな?)」というグループで「クデヌンナエインセン-あなたは私の人生」を歌って注目を受ける。
84年にはソロデビューを果たし、TVドラマ「ムルボラ-波しぶき」の主題歌を歌ったあと、デビューアルバムの「サランエミロ-愛の迷路」86年のセカンドアルバムの「カペエソ-カフェにて」の大ヒットで、女性トロット歌手の代表的地位を獲得、コンスタントにヒットを飛ばし現在にいたっている。
日本でも韓国酒場の女性の間で「愛の迷路」の人気は高く、Morris.もすぐ覚えてしまった。
「カボリンタンシン-去りにし君」「ウリンノムシプケヘオジョッソヨ-あっけない別れ」「ミリョンテムネ-未練のために」など名曲が目白押しだが、Morris.は、ちょっと毛色の変わった難曲「パラメフンドゥルリゴピエジョジョド-風に吹かれ雨に濡れようと」を偏愛している。カンツォーネの影響を感じさせる曲で、語りかけるように始まり、だんだん盛り上がって、後半は朗々と歌い上げるスケールの大きさに、聞くたびに感動させられる。そして、この歌を歌いこなす、チェジニの実力の程も思い知らされるわけだ。
彼女は美貌を誇る歌手ではない。いや、はっきり言えば、そのへんにいるアジュマ(おばちゃん)顔である。しかし韓国の歌謡界は、歌手は歌さえうまければそれでいいという、暗黙の了解があり、なまじ美人歌手は、美貌を売り物にして歌の下手さをカバーしていると非難されることさえあったようだ。
でも、おかげで??先日歌謡舞台に登場したチェジニ(写真)は、以前と同じ顔で、同じ雰囲気を感じさせてくれた。
チェジニの「カペノレ」シリーズのテープは2本ほど持っているが、彼女自身の持ち歌や、トロット名曲が切れ目無く続いていて、心地よい。これをヘッドホンで聞くと、何か不思議な気分になる。左右の耳にエコーたっぷりの同じ声、同じ旋律が聞こえるのだ。あたりまえではないかと思われそうだが、そうではない。同じ声で斉唱している雰囲気なのだ。どうやらこれは録音の際、チェジニ自身が同じ旋律を二重録音しているのではないかと思うのだが、つまびらかにしない。
ただ、これを踏襲したとおぼしい、キムヘヨン嬢の「エップンカペ」シリーズでも同様の仕掛けがあるようだ。今度、TOP MUSICのソパンソク社長に会ったら、訊いてみよう。

悲しみに象嵌されし甘みゆゑ愛の迷路に故意に踏込む 歌集『韓歌』より

「サランエミロ」のビデオ